東京高等裁判所 平成9年(行コ)47号 判決 1998年3月26日
神奈川県川崎市高津区野川三六二四番地一
控訴人
山本保夫
右訴訟代理人弁護士
篠原義仁
同
藤田温久
同
根本孔衛
同
杉井巌一
同
三嶋健
同
岩村智文
同
西村隆雄
同
渡辺登代見
同
児嶋初子
神奈川県川崎市高津区久本二丁目四番三号
被控訴人
川崎北税務署長 山下二三夫
右指定代理人
前澤功
同
内田健文
同
銭谷覺
同
栗原牧彦
主文
一 本件控訴を棄却する。
二 控訴費用は、控訴人の負担とする。
事実及び理由
一 控訴の趣旨
1 原判決を取り消す。
2 被控訴人が、
(一) 平成二年三月二日付けでした控訴人の昭和六一年分所得税の更正のうち、所得税金額二九三万一六五二円、税額一九万六七〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定、
(二) 同日付でした控訴人の昭和六二年分所得税の更正のうち、所得金額三四二万二七一五円、税額二三万五一〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定、
(三) 平成二年一月一九日付けした控訴人の昭和六三年分所得税の更正(ただし、同年六月一三日付け異議決定により一部取消し後のもの)のうち、所得金額四四二万二三三五円、税額三一万〇八〇〇円を超える部分及び過少申告加算税賦課決定
をそれぞれ取り消す。
二 事案の概要
次のように付加、訂正するほかは、原判決の事実及び理由の「第二 事案の概要」の欄に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決七項七行目の「所得金額」の前に「、確定申告額である」を、同一四頁二行目の「長期間」の前に「十数年の」を加え、同一八頁二行目の「利益」を「不利益」に同二一頁八行目の「申告納税」を「納税申告」に改め、同二二頁五行目の「いえない」の次に「し、被控訴人係官は『収入、仕入れ、経費などの所得金額を算出する要素を帳簿や書類等で確認することです。』と返答している」を加える。
2 同五〇頁五行目の次に次のように加え、同五八頁四、五行目及び同五九頁九行目の「本件各係り争年分」を「本件係争各年分」に改める。
「控訴人は、控訴人の外注費の割合は一・三ないし一・六パーセントであるのに対し、被控訴人が抽出した比準同業者のそれは五パーセント以下というものであるから、本件推計には合理性がないと主張するが、一般に、ある作業を自己において行う場合よりも外部に委託した方が利益率は低下するものであり、外注費の割合を高めることにより、比準同業者の特前所得率が低くなるから、仮に控訴人の外注費の割合が正しいとしても、五パーセント以下という比準同業者選定の基準は、控訴人にとって有利な基準であるといえる。」
三 当裁判所の判断
次のように付加、訂正、削除するほかは、原判決の事実及び理由の「第三争点に対する判断」の欄に記載のとおりであるから、これを引用する。
1 原判決六七頁九、一〇行目の括弧書きの中を「甲四号証、八七号証の一、二、一〇九号証、一二一号証、乙三号証、四号証、証人久保田保、同山口孝行、控訴人本人、弁論の全趣旨」に改め、同六八頁七行目の「税務調査が」の次に「昭和五〇年の開業以来」を、同六九頁三行目の「妻に対し」の次に「、身分証明書と質問検査章を提示したうえ」を加え、同四行目及び同七〇頁五、六行目の「ところが、」を削り、同七一頁九行目の「窪田係官が」の次に「、身分証明書と質問検査章を提示しながら」を加え、同七三頁三行目の「確認」を「所得金額を算出する要素を帳簿等で確認すること」に改め、同五行目の「拒み続けた」を「拒み続け、帳簿書類を同係官の閲覧に供しようとはしなかった」に改める。
2 同一〇行目から同七四頁一行目にかけての「証拠はない。」の次に「また、証人山口孝行の証言中には、右調査の際、テーブルの下に置いてあった書類の一部を持ち上げ、それをテーブルの上に一回置いて『あるよ。』と言ったとする部分があるが、同証人の陳述書(甲一〇九号証)にはそのような記載は全くないし、原審における控訴人本人尋問の際にも全くそのような事実は供述されていないことに照らすと、右証言はにわかに採用し難い。」を、同二行目の「対しても」の次に「、具体的な調査理由を開示するよう繰り返し要求するのみで」を加え、同七六頁二行目の「資産状況」を「資産増減の状況」に改め、同六行目の「供述」の次に「及び証人山口孝行の証言」を加える。
3 同七七頁四、五行目の「一〇五号証の一、二」の次に「、一〇九号証」を、同五行目の「証人石田隆俊」の次に「、同山口孝行」を加え、同八二頁三行めの「九名の退席」を「九名を退席させること」に、同八行目の「及ぶこともあり」を「及ぶこともあることから、所得税法二四三条、国家公務員法一〇〇条により守秘義務を負う税務職員としては、調査の過程でこれに立ち会った第三者に右秘密を知られること自体相当ではないし、さらに」に改め、同八五頁一〇行目の「場合に」の次に「、『協力が得られないのでやむを得ず独自の調査を行う』旨を伝えて」を、同一一行目の「あくまで」の次に「被控訴人内部の」を同八六頁二行目の「久保田係官は」の次に「、五月一七日の電話でのやりとりの際に、控訴人に対し『調べられるところは調べておく。』と述べたうえで」を加える。
4 同八七頁九行目の「所得税額」を「所得の金額」に、同八九頁八、九行目及び同九一頁二行目の「調査の」を「推計の」に、同九〇頁七行目の「右は」を「右のような事情について、久保田係官等に説明し、調査の時期につき配慮を求めたのは」に改め、同八行目の「やりとり」の次に「である」を、同九二頁二行目の「管内」の次に「の後記三区」を加え、同九三頁五行目の「六九六立法メートル」を「六九六立方メートル」に改め、同一〇一頁一〇行目の「乙五、六号証」の次に「、証人鈴木盛」を加え、同一〇二頁三行目の「本件推計に際しても」を「本件推計の時点のみならず、本件係争各年の時点においても既に」に、同四、五行目の「認められるから」を「推認されること、本件各更正に際して被控訴人が当時の川崎北税務署管内全体(五区)から抽出した比準同業者(本件係争各年とも五件)の水道使用量一立方メートル当たりの売上金額及び特前所得率の平均値と本訴において被控訴人が主張する同管内三区から抽出した比準同業者(同じく、本件係争各年とも五件)のそれらの平均値とは、昭和六三年分の水道使用量一立方メートル当たりの売上金額の平均値に一四〇・四九円の差異があるほかは、全く同値であり(甲四号証。このことは、対象区域を同税務署管内全体としても、管内三区としても、抽出基準を満たして抽出された同業者は同一であったものと推人されるところである。なお、右の数値の差異は違算等によるものと考えられる。)、被控訴人が比準同業者の抽出範囲を何らかの目的で操作するなどの恣意の介在を疑わせるものでないこと(控訴人は、右五区からの比準同業者の抽出では控訴人の自主申告の正当性が立証されてしまうため、恣意的なすり合わせ作業が行われ、結果として右三区が抽出されたと推認できると主張するが、これが理由がないことは、右事実から明らかである。)、証人鈴木盛の証言によっても、被控訴人が比準同業者を抽出する範囲を本件更正の時とは異なり右三区に限定した理由は必ずしも明確ではないが、同証言を子細に検討しても、控訴人の事業所と同一の経済圏を形成する区域に限定したいということ以外に、他に特別な目的をもって右のような限定をしたものとは窺われないことなどに照らすと」に改める。
5 同一三〇頁八行目の「いえない」の次に「(控訴人主張の推計方法によると、その比準同業者は二業者と極めて少数になってしまい、その平均値は被控訴人主張の比準同業者の平均値と比べてその普遍性において劣るものになるといわざるを得ない)」を加え、同一〇六頁一行目の「得ない」を「得ず、五パーセント以下というかなりの低率に限定しているから、これをもって直ちに合理性を欠くとはいえない」に改める。
四 よって、原判決は相当であるから、本件控訴を棄却することとする。
(口頭弁論の終結の日 平成一〇年一月二〇日)
(裁判長裁判官 鈴木康之 裁判官 柳田幸三 裁判官 小磯武男)